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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)401号 判決 1957年2月08日

下関市大字長門町四一番地

上告人

坂本浩章

右訴訟代理人弁護士

岩本憲二

神田静雄

山口市相良小路

被上告人

河村隆弘

右当事者間の所有権移転登記抹消登記手続履行請求事件について、広島高等裁判所が昭和三〇年二月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨第一点は、原審の訴訟手続を批難するが、弁論更新手続は期日に出頭した当事者の一方が双方に係る従前の口頭弁論の結果を陳述すれば足る(当裁判所昭和二九年(オ)第二八五号事件同三一年四月一三日判決参照)と解されるのであつて、記録に拠り、所論口頭弁論期日に出頭した相手方代理人が従前の口頭弁論の結果を陳述したことの認め得られる原審の右訴訟手続に所論違法はない。されば、これを前提とする論旨も理由がない。

論旨第二点は、原審が証人坂本源一の取調を施行しないで弁論を終結したことを批難する。けれども、記録に拠ると、所論証拠調については民訴二六〇条に所謂障碍がありその挙証者たる上告人に於て右障碍除去に努めなかつたので、原審は昭和二八年六月一五日に為した所論証拠決定を昭和三〇年二月九日に取消したことが認められる。而して、民訴二六〇条はその証拠方法が所謂唯一の証拠方法であつても適用さるべきである(なお、当裁判所昭和二七年(オ)第九七八号事件同二九年一一月五日判決参照)と解されるから、原審が所論証拠を取調べないで弁論を終結したことを違法とはいえない。されば、これを前提とする論旨も理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 奥野健一)

昭和三〇年(オ)第四〇一号

上告人 坂本浩章

被上告人 河村隆弘

上告代理人神田静雄の上告理由

第一点 原審は昭和三十年二月九日の口頭弁論で裁判所の構成について変更があつたにかゝわらず上告人の従前口頭弁論結果の陳述なくして弁論を終結して判決されたのは民事訴訟法第百八十七条二項訴訟手続についての違背又は審理不尽の違法がある。

第二点 原審に於て上告人は仮に河村英治が本件売買や之に基く登記手続につき代理権を有していなかつたとしても被控訴人は控訴人に対して後日その行為の追認を為したものである(昭和二十八年六月十五日口頭弁論調書)と抗弁しその証拠方法として阪本源一の尋問を申請し原審はこれを採用し管轄裁判所に嘱託されたが受託大森簡易裁判所は証人阪本源一の転居先不明とゆう郵便従業員の符箋で証拠調不能として原審え返還し原審は昭和三十年二月九日上告人が出頭していないままで右証拠調は不能として取調べない旨を告げて弁論を終結され原判決に於て右事実を認める何等の証拠がないので該抗弁は採用できないとして斥けられたが若し証人の転居先不明であることやその為に取調べが不能であることを上告人が知り得たなら上告人は直ちに調査して上申することを得たに拘らず原審は上告人に対してはその通知もなくその機会を与えず弁論を終結し証拠なしとして右抗弁を排斥された原判決は訴訟手続上の違背又は審理不尽の違法がある。

仍て原判決は破毀の裁判を免れないものと思料する。

以上

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